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九木が消えた日。
それはつまり、植物の異常成長が初観測された次の日。
京都の北奥の山で洪水が起きた。
夕方に起こった洪水は山の木々を巻き込み大規模な土砂崩れを起こした。
ふもとの町はほぼ壊滅。
住人は近隣の学校の体育館を仮住まいとしている。
と、いうのが病院で目覚めた藍が千秋から聞いた事の顛末だ。
「まったく、あの有明とかいう妖怪はセンスも壊滅的だね。一族の能力を使ったら制御が効かなくなって洪水を起こすとかいい加減にしてほしいんだけど」
「助けてくれたんだからそんなに言わなくても」
藍はそう言いながら千秋の言葉にぶすくれている有明を宥めていた。
「あと数分あの洪水が早かったら、僕らも竹内蛍も死んでたよ」
そう言いながら千秋は慣れた手つきでりんごの皮を剥いていく。
シャリシャリと小気味いい音。
包丁ももったことがないお坊ちゃんだと思っていたが、そういうわけでもないらしい。