ずりずりと尻もちをついたまま有明は後ずさる。
何とか九木を宥めないと。
じゃなきゃ俺が殺される。
「いや、普通に何の変哲もない話ですよ。あぁほら、あれだ、えっと、空にある星を一つほしいと思いませんかって、そんな感じの。はは、ははは」
引きつっている。
自分でも分かっていたが、笑い飛ばす以外どう切り抜ければいいのか分からない。
九木の鋭い歯が見える。
これは。
本気で、俺殺されるのか。
いいのか、帰れなくなるぞ。
そう思っても、口が動かなかった。
グルルルル、と。
九木の低い唸り声の隙間。
チリン、と。
鈴を鳴らすような声が響いた。
「ほしい」
目の端に、青白い光が見えた。
何だ、誰だ。
考える間もなく、直感で分かった。