⌘
「母から言伝えられてきました。九木様にお力添えするように、と」
お前は誰だ。
思わずそう突っ込みたくなるような恭しさで、有明はゆっくりとお辞儀をした。
茂みの奥から現れた妖怪。
乙姫様ではなく、有明。
何故有明が。
いや、というか有明敬語使えたのか。
藍は現状も忘れてポカンとしてしまう。
「貴様は誰だ」
藍の心を代弁するかのように九木が唸る。
びくりと茶色いふわふわの頭が揺れた。
有明は元々青白かった顔をさらに青白くさせる。
「竜宮一族一子伝来の能力を受け継いだ有明です」
母はもう、未来移動の力は使えません。
そう有明は言った。
九木はずっと目を有明に合わせ続ける。
「なるほど。貴様か」
フゥーッと、湿った息が吐き出される。
藍は九木が話してるうちになんとか有明とアイコンタクトをとろうとした。
だが、有明はことごとく無視する。
どういうつもりか。
もしかして、藍とダンを見殺しにするつもりか。
千秋は有明に何か言ったのか。
それとも、未だに乙姫様を探していたりして。
考えは悪い方へばかり流れていく。