「あんたの能力を受け継いだのは有明って奴か」
千秋が確認すれば、再びカランッと貝が落ちてきた。
やけにあっさり情報をくれるな、と桜は思った。
『先刻九木の元へ行った。既に死んでいる可能性有り』
千秋はじっと難しい顔をしてその貝を見つめていた。
「嘘はついてないだろうな」
キツイ口調が飛ぶ。
ゴゴッと川の水量が一気に増し、ジャブジャブと足元が水に浸った。
ザブリと、川から何かが上がってきた。
ドス黒く、緑の藻がビッシリ張り付いている。
ドスリと、それが一歩進むと足元が揺れた。
川の水は溢れ続ける。
ふくらはぎにまで水かさが増す。
亀だった。
体長五メートルはあるだろう、亀が川から上がってきた。
異様な妖気。
乙姫が、変化したのだ。