藍がそう考えていると、ダンが立ち止まった。
「どうしたの?」
そう言って頭を切り替え顔を上げた。
そしたら、目の前に腕が見えた。
ブラブラと、力なく木々に垂れ下がっている腕。
肘から切り落とされていて、血のような黒い液体がポタポタ滴っている。
足元をよく見れば、おびただしい量の黒い羽が散らばっている。
上を見れば、木々に何かが突き刺さっている。
目を凝らさなくても分かった。
あれは胴体だ。
頭はもがれている。
切り裂かれたのか、翼が皮一枚でプラプラ揺れていた。
『山に登ったって、九木の本拠地なんてどこにあるのか分からないよ、私』
数時間前。
藍は千秋にそう言ったのだ。
『分かるよ』
やけに落ち着いた声で千秋はそう言った。
『君だったら、分かる』