「君が、東北の妖怪を連れて行かないなら、僕は乙姫との交渉の話はなかったことにする」
千秋は力強い口調でそう言った。
一歩も引く気のない様子に藍は「分かった」と渋々答えた。
ダンを連れていく。
ならばやはり、確実に九木を殺せる方法を取らなければ。
それで、今ダンと二人山道を歩いているのだ。
千秋にはこの山に九木の本拠地がある、としか言われてない。
「ダンさぁ、」
藍は小さな手をぎゅっと握りしめながらダンに声をかける。
小さな目がこちらを見上げてくる。
「多分、死ぬことになるんだけど、付いてきてくれる?」
どのみち拒否権はないのに、我ながらひどい質問をしているな、とは思った。
それでも、これからいく場所で死ぬだろうことは伝えておくべきだと判断した。
ダンの意見など聞かずに進んだ計画だ。
恨み言でもなんでもいいから、何か言ってほしかった。
むしろ、逃げ出してくれてもいい。
藍一人で九木と共に死ぬほうが気は楽だ。
どう九木を殺すか、が問題にはなるが。
そしたら、クイッと小さな力で手を引かれた。
思わず立ち止まる。
パッと温もりが消え、ダンはその場にしゃがみこんだ。