何人もの赤子が生まれ、全員九木の元へ死にに行った。

彼らの顔が次々と弓月の頭に浮かぶ。

頼りない手で、脆い肩で、彼らは必死に生きた。
そうしていつ切れるかも分からないような、か細い命の繋がりは千年もの時を越えた。


『人間も捨てたもんじゃないんだよ、弓月。』



知っている、と。
あの時答えたかったが、答えてはいけないと思った。

今はまだ認めてはいけない。

弓月は天狗の長なのだから。
妖怪だから。
人間とは、契約のために一緒にいるだけなのだから。

だから、まだ。

弓月は56人目の赤子を腕に抱いたまま空を見上げた。

真っ暗で何も見えなかった。