1868年。

日本の鎖国が終わり、尊王攘夷運動が激しくなった。
幕府と新政府軍の戦い、戊辰戦争ももうすぐ終わるだろうという頃。

なんとなく、日本は変わるのだろうなと皆が漠然と考えていた。

そんな江戸時代の終わり。

弓月はアテルイ50人目の末裔と共に江戸に住んでいた。
50人目の末裔の名前はお菊といった。

江戸でも有名な貿易商の店の下働きをしていた。
お菊はなんとそこの若旦那と恋に落ちた。
だが、大店の跡継ぎとただの下働きの娘の結婚が許されるはずもなく、店から追い出されてしまった。

そしてなんとまた驚いたことに、お菊に子供ができていたのだ。


「大丈夫。私一人でこの子を育てます。」


お腹を大きくしたお菊のその言葉を弓月は複雑な思いで聞いていた。

そうして子供が生まれ半年経った今。

お菊の元にも、九木がやって来たようだ。

腕に赤子を抱いているお菊は沈んでいく夕日をじっと見つめている。