「なんじゃ、人首丸。」
じっと弓月を見つめるその眼光は力強い。
「今日、子狐に会った。」
「九木か?」
弓月は眉を顰める。
この二十年特に何も仕掛けてこなかった九木。
人首丸は妖怪のことは一通り知っているが、アテルイほど呪術には詳しくない。
「九木の使いらしい。子が生まれたら、九木の元へ一人で来い、と言われた。」
人首丸は下を向く。
彼も九木の恐ろしさを知らないはずがない。
行く必要などないと分かっているはずなのに、人首丸はやけに悩ましげだった。
弓月は目を細める。
「殺されるぞ。」
「来なかったら、村を潰す、と。」
アテルイだったらまだしも、人首丸の力では九木を抑えられない。
なるほど、と弓月は思う。