「分かったよ。あんたの弟を探すのを手伝う。その代わり、頼みがあるんだよね。」
千秋のその言葉にふい、と竹内天音は顔を上げる。
ここでその話をするのか、と桜は少々意外な気がした。
だが、弟が危ない状況であるのならさすがの竹内天音も了承するだろう。
「あんたの家の牛木の封印を解いてもらいたいんだよね。」
「無理ですね。」
一瞬で予想を裏切る竹内天音。
え、弟の命がかかってるんじゃないの?と桜は動揺する。
佳那子も大きな目をさらに大きくしていた。
「弟が危険なんだよ。」
「だからといって、1700年も竹内家が守ってきた封印を解くわけにはいきません。あなたたちは、牛木である壱与が九木を倒すことを期待しているのでしょう。」
「……そうだけど。」
ハーッと桜は息を吐く。
さすが竹内天音だ。
こちらの考えも全部分かっている。
頭良いとは聞いていたが。
「1700年です。壱与は1700年も一人きりでいたのです。いえ、彼女は永遠に一人きりで生き続けるつもりだったのですよ。自我が保てると思いますか?」
「……。」
竹内天音の言い分に千秋は黙る。
千秋が押されるなんて珍しいな。
自分の立場も忘れ、桜はこの状況に見入っていた。