何だか分からないが九木が怒っている。

本屋にいた人たちも足元をジワジワと覆ってゆく木々に不信感をおぼえたようで困惑している。
蛍も不安そうな面持ちで藍の方へやってきた。

どうしようか。

藍は左右隣にいる有明とダンの顔を見る。

九木の仕業でこんなことになっている。
鬼道学園ではもうすでに動いているだろう。

だったら、藍も何かしなくては。
一応とはいえ、かみの学年なのだから。


「蛍、ごめん。私やっぱ蛍の家行けないわ。」

「え、なんで。」


そう言ってから蛍は口をつぐみ下を見る。
じわじわと足元に広がる木。


「これに関係してんの?」

「うん。妖怪の仕業らしいから、鬼道学園に戻らないと。」

「まじでいんのかよ、妖怪。」

「まだ疑ってたんだ。」


クスリと、藍は顔をほころばせる。
ギュッと、藍の後ろのシャツの裾をダンが握る。

藍は手を後ろに動かし軽く頭を撫でてあげた。
子供のはずなのに、ダンは冷たい。
妖怪は体温なんてものはないのかもしれない。