「藍?」
黙り込んだ藍に蛍が不思議そうに声をかけてくる?
藍はじっと暗い海を見つめていた。
そういえば、あった。
弓月が伝えようとしていたことが。
一つ、ある。
「蛍。」
ふと顔を上げ、蛍を呼びかけた藍。
やけに穏やかなその目に蛍はドキリとする。
その目はまるで。
大切な話をする前のような。
今まで黙っていた秘密を打ち明けるような。
そんな真剣さをたたえていた。
蛍はゴクリと唾をのむ。
藍がこれからどのような話をするのか。
どれくらい重い話なのか。
聞くのが怖い気もする。
ゆっくりと。
藍の口が開く。
「お金貸してくれない?」
「…………お、おう。」
蛍は三十秒前の自分がひどく馬鹿らしく思えた。