「人間が万物を知り得ることなんてないだろうし、知ろうとする必要もないと思うんだよ。大昔の自然崇拝とか俺は好きだ。自然が分析の対象になっちゃうとさ、初めて大自然を目にした時感じた神々しさとかそーゆーのを、もう感じられなくなる気がする。」


目線を上にする。

黒い空に、砂糖をまぶしたように星があった。
チカチカ光っているのは飛行機だろうか。
それとも人工衛星か。


「人間には知り得ない、そんな存在であってほしいんだ、宇宙は。」


分かるような分からないような。

藍はふぅっと息を吐く。

一つだけ、分かったことと言えば、蛍も色々と考えているということだ。
聞いてみなくちゃ他人の考えなんて分からない。

もっと聞いておけば良かったな、と藍は思う。

学校でいつも藍にぶつかってきていた女の子とか、親子丼しか頼まない河童とか。

彼らだって彼らなりに何か考えていたのかもしれない。
藍が思ってもみなかったようなこととか。

何よりも、弓月とは一番時間があったのに。
いつも聞き流していた。
話の中で、弓月は何か伝えたかったのかもしれないのに。