突然スッと立ち上がった藍に、二人は些かビックリしたようだ。

しかし藍が降参したと解釈したのか、ニヤリと笑みを浮かべる。
敵は男。
乙姫様の息子だけあって二人ともイケメンだ。

藍はイケメンが何か言う前に素早く言葉を発した。


「五秒以内に手と頭を地につけ伏せないとこの壺を地面に叩きつけます。」


二人のイケメンがキョトンとする。

しかし藍は相手に「は?」と思わせる隙も与えない。


「五四三……」

「わぁぁぁぁ!!」


藍が壺を振り上げると同時にイケメン二人は土下座した。
なかなか面白い光景だ。

息つく間もなく藍は次の言葉を放つ。



「ではこの壺をキャッチしてください。」

「は?」


イケメンが理解する前に藍は両手を振り上げる。


「それっ。」


掛け声と共に、ひょいと壺を投げる。
廊下に並ぶたくさんの芸術品の中の、大理石で出来た見事な龍の釣行に向かって。


「うわぁぁぁぁ!!」


二人のイケメンは藍の狙いが分かったのか、宙を舞う壺を追いかける。