「小雨、弓月のとこの人間が逃げたって!」

「大変だ。」

「母様は何と?」


ドタドタと、男女の様々な声がする。

弓月のとこの人間、私のことか、と藍は心臓をバクバクさせる。


「母様は、見つけたらその場で殺してもいいと。」

「そんな、弓月を敵に回すの!?」

「九木を敵に回すよりはいい。賢明な判断だと思うよ。」

「曇天、お前も先程の揺れは感じただろう?九木の妖力はもう手の打ちようがないほど大きくなっている。」


揺れ?
そんなのあったっけ?と藍は首を傾げる。

藍が寝ている間に揺れたのだろうか。

それよりも、九木の妖力が大きくなったとは。
弓月を敵に回すとは。

何が起こっているのだろうか。
藍は息を潜めて考える。