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ヒタヒタと、藍は見つからないようにひと気のない方へどんどん廊下を進んでいった。
とにかく有明を見つけないことには何も始まらない。
どういうわけか乙姫様もその息子も有明のことについては触れてほしくないようだった。
まるで汚らわしいもののように。
そうなると有明を人前に出すことはないだろう。
人のいないどこかに、彼を隠しているはずだ。
宴会でもしているのか騒々しい部屋の前を何度も通り過ぎる。
食事を運ぶ女の人たちやきらびやかな格好の踊り子たちとすれ違いそうになる時は廊下に飾ってある芸術品の後ろに隠れた。
トイレと言って出てきたが、トイレにかかる時間は大幅に過ぎているだろう。
大をしていたと言っても通用しないくらい。
大きなサンゴの彫刻が施された壺の後ろに隠れていた藍は、通り過ぎる乙姫の子供たちの会話に耳を澄ませた。