「……九木だ。」
千秋の呟きに班の四人がざわつく。
「な、なんでこんな急激に妖力が大きくなって……」
「確かなことは分からない。けど、」
千秋が顔を上げる。
不安そうな八つの目が見つめてきていた。
彼らも十年間の訓練によって妖力は感じとれるはずだ。
つまり、何があったかなんて自分たちで予想は出来ているのだろう。
ただ、認めるのが恐ろしいだけで。
「さっきまで感じられたダイダラボッチの妖力が今はもう感じられない。」
気付いてはいた。
ダイダラボッチが千秋たちのいる山から遠ざかっていっていたのは。
だんだん小さくなっていく妖力のその先に、九木が拠点としている森があることも。
大きな揺れの後。
ダイダラボッチの妖力は消えた。
それが意味するところは。
「九木が、ダイダラボッチを食べたんだ。」
ダイダラボッチの妖力は、全て九木に吸収された。
絶望的な顔をした五人の間を、冷たい風が通り抜けていった。