「あの、なんで私がそんなすごい竜宮城にいるんですか?」
藍と乙姫が話している間にも乙姫の娘たちはテキパキと料理を藍の前に並べていく。
マグロ、イクラ、ウニ。
豪華な料理がキラキラと光っている。
「私の息子が藍さんを連れてきてしまったのです。」
乙姫の声が急に低く、冷たくなった。
背筋がぞくりとする。
彼女が言う息子、とは有明のことだろう。
彼女のヒレのような耳は、有明のそれとそっくりだから。
「すいません、お手洗いお借りしてもいいですか?」
「よろしいですよ。夕空、ご案内してあげなさい。」
乙姫が娘の一人に指示を出すのを、藍が遮った。
「いえ、場所さえ説明してもらえれば自分で行けますので。」
目覚めた時に藍が一番初めに会ったイケメン、秋天は有明のことを「茶色いグズ」と呼んでいた。
そして有明の話になると途端に雰囲気を変えた乙姫様。
藍が目覚めた部屋にあった藍のご先祖さまの写真。
襖を開け部屋を出る。
白い床と、廊下の両端にはたくさんの芸術品が展示されている。
ここ、竜宮城には何かあるな、と藍は思いどこまでも続く廊下の先を見つめた。