夕食時の生徒たちが騒ついている第三広間。

手早く夕食を終えた伊勢千秋と石上桜は早足で広間を出て行く。

向かう先は書庫。
西文紫月がいるであろう場所。

かみの学年でトップの千秋と桜が歩けば廊下を歩く生徒は皆一様に道を開ける。
そんな周囲の反応も初めは嫌だと思っていたが、今ではもう慣れてしまいなんとも思わない。

熱っぽい視線を送られるも桜はあっさりと無視し、前を歩く伊勢千秋の横顔を見る。

その顔はいつもより険しかった。


「どう思う?」


言われた言葉に一瞬桜はためらう。

廊下にひと気がなくなってきた。
代わりに紙の匂いが満ちてくる。

この先は西文紫月の本拠地だ。
二千年以上もの歴史が保管されている。


「有田藍の話か?」

「牛鬼は竹内家にいると思うか?」

「分からない。」

投げやりな桜の答えに千秋はムッツリとする。


「竹内家が何かしら妖怪と関わってることは鬼道学園も千年以上前から知ってたんだよな。竹内家は干渉してほしくないようだったから何もしなかったらしいが、まさか牛鬼を持ってたとはな。」

桜は独り言のように呟く。
そうして、夕食時の異様な空気を思い出した。