「あの妖怪学の授業はねぇよな。」
妖怪学。
牛鬼や九木についての授業のことだろうか。
藍が黙っていれば有明はフワフワの茶髪をいじりながら話を続ける。
「あの教師全然最近のこと話さなかったし。」
「……最近?」
「牛鬼は進化し続けてもう昔のままじゃない。牛鬼を倒しても受け継がれるのは能力だけで、牛頭や蜘蛛の身体は引き継がれない。不滅っていう性質はそのままだけどな。」
「そうなんだ。」
有明がペラペラと牛鬼について話す様子を見て素直に藍は感心した。
やはり妖怪のことは妖怪の方が詳しいようだ。
「だから今は牛鬼じゃなくて牛木の名で通ってる。」
「……今?」
「は?」
「今もいるの?」
藍は思わず身を乗り出した。
動揺したのか有明の茶色い目がユラユラする。
妖怪学であのおじいさん先生はこう言った。
牛鬼は1700年間存在が確認されなかったと。
しかし有明の話では牛鬼は牛木に進化して今もいる、ということになる。
1700年の謎の答えを、有明は知っているのだ。