『牛鬼』
筆圧の高い字でそう書かれていた。
藍はノートを忘れてきていたので教科書の隅っこにその二文字を書き写す。
「ぎゅうき、と読みます。うしおに、という別名もありますがここでは三大妖怪との関連も含めてぎゅうきと呼ぶことにしましょう。」
チョークを置いて先生は部屋全体を見回す。
「この妖怪は文献に載っていますが、ここ1700年の間姿を見せていません。よって、鬼道学園の重役の方々の間でも存在の有無の意見が分かれています。」
藍の隣では有明が頬杖をついている。
「また、牛鬼は不滅の妖怪とも呼ばれています。不死ではなく不滅です。では、牛鬼がこう呼ばれる理由が分かる人はいますか?」
先生がそう問いかければ何人かの生徒がちらほら手を挙げた。
「では、橘くん。」
「はい。牛鬼を倒した者が次の牛鬼になるからです。」
「正解です。」
不滅の妖怪なのに1700年も存在が確認されていない。
藍はその矛盾に首を傾げた。
最後の牛鬼は自殺でもしたのだろうか。