「東北で妖怪?」
その呟きが聞こえたのか、佳那子は藍に説明してくれた。
「私たちは妖力を感じ取れるように日々訓練してるの。で、その中でも伊勢君の家系は他の家系よりも妖力をはっきり感じ取れる家系なんだよね。一ヶ月前に伊勢君と伊勢君のお父さん、あ、理事長さんが東に嫌な妖力を感じるってことで伊勢君が東北に調査しに行ったの。そこで別の妖力の溜まり場にも寄ってみたら藍ちゃんを見つけたってわけ。」
あぁ、あの風呂場の壁が破壊されたのにはそういう経緯があったのか。
あれ、でも。
「あの時、伊勢千秋はすでに私の名前知ってたんだけど、なんで?」
『有田藍さん?』と舞い上がる埃の中で聞いた声を思い出す。
「藍ちゃんが竹内蛍の友達だったからだよ。竹内家と鬼道学園はけっこう関わりがあるから、竹内家の人間の生活から交友関係まで把握してるの。」
さらりと佳那子は恐ろしいことを言った。
プライバシーはどうなるのだろう、それ。
話を逸らそうと藍は別の話題をふる。