「妖怪がいるんだ、うちには。」

「えー、いるわけないよ。」

「……」

「父さん?」

「お前は、竹内家には相応しくないな。」


数日後。
そのような会話がなされ、蛍は岩手の分家に預けられた。

小学校も岩手の方に通うことになった。
父親の判断だった。

ヤツデの葉が届いた日、彼は確信したのだ。
天音は、危ないと。
一歩間違えば身内であれど竹内家の脅威になる。

少ない時間の中で出した父親の最善策。


「せめて、次期当主の蛍だけでも災厄を免れ生き延びてくれれば。」



そうして彼はそれから死ぬまでの十年間、一度も息子の顔を見ることはなかった。