しかし天音の頭がズバ抜けているからといって、彼女がガリ勉というわけではないのだ。


「友達の家に遊びに行ってきます。五時には帰ります。」


休日になればそう言って友達の家に遊びに行ってしまう。

女中の話では、家でもほとんど勉強していないと聞く。
宿題をやるだけ。
天音は教科書を授業中に読むだけで事足りたそうだ。

家では本を読んだり絵を描いたり。

ただ一つ。
女中から聞いた天音についての話で、父親がゾッとしたことがある。

天音が小学二年生の頃。

初夏。
眩しい黄色い着物を着た女中が、ニコニコしながらこう報告してきた。


「天音さんは民俗学に興味があるようです。最近図書館から借りてくる本はほとんど妖怪関連の本なんですよ。」


その言葉を聞いた瞬間、父親は青ざめた。
天音は、当主にするつもりはない。
つまり、竹内家が代々守ってきた秘密については何も教えていないのだ。

それなのに彼女は気付いた。
わずか七歳で。