「…ふう」

悪魔共に、和希の尿意も去っていった・・・

悪魔が願いをかなえてくれたおかげで、和希に穏やかな時が戻ってきた。

悪魔が現われてから、去っていくまで10分ほどしか経っていない。

あんなに悪魔のパワーに溢れていたのに、いまは何も感じない?

思考を読もうとクラスメートで試したが、まったく読むことができない?

「…もしかして悪魔の思考しか読めなかったのか・・・?」

悪魔のパワーを失っても、和希の心は壮快な気持ちに溢れている。

たぶん悪魔のパワーは尿意と共に消え去ってしまったのだろう。

改めて和希は思い返してみる・・・

「…もしもあの時、尿意が無かったら、あの悪魔を恐れていたのかもしれない?」

「…尿意を我慢するのに手いっぱいだったから他の感情に神経が回らなかった…」

「…案外悪魔のパワーを奪えたのも尿意のおかげだったりして?」

「…それにしても、あの悪魔、よく俺の願いをかなえたもんだ」


悪魔が人の願いを聞かず、勝手にその者の願いをかなえること、

それは重大な契約違反なのである。

悪魔は人の願いをかなえる代わりに必ず見返りを求めなければならない。

願いを聞く前に、勝手にその者の願いをかなえるという事は、

見返りを求めない無償の奉仕になってしまうから。


それは悪魔がすることではない、神がすることなのである。


和希は、あの悪魔の判断を改めて感心する。


「…自分が助かるためなら神にも魂を売るということか…」


和希は、悪魔の最後の言葉を思い出してみる・・・


「…我が身が滅びるよりは、千年の眠りの方がましだ!」


そう言いながら不適な微笑みを向けた、あの悪魔の顔が心に残る。



「…見返りを求めず、願いをかなえたのに…」



「…その代償が千年の眠りか…」



和希は、二度と会うことは無い、あの悪魔の事を想い同情する・・・



・・・しかし、その同情も次の授業の途中まで・・・


和希には、新たな試練が訪れている!


「こ・・・今度は、便意かよー!」
       

       完