* 風は、南から吹いている。 私は、一歩前へ踏み出す。 風は、下から上に突き上げるように吹いている。 また、一歩。 少し、風力は弱いかもしれない。 それでも一歩。 空は、青すぎるくらいの青。 両手を水平に広げ、目を閉じる。 太陽の眩しさは、閉じた瞼の上からでもわかるほど。 風が私の背中を押すように撫でた。 ほら。 今なら――――……。 *