父さんは腰が据わってしまい、イスから立ち上がれないでいる。



「それで自分を刺す……の?」



 ユウの問いかけに大きく頷いた俺は、右手に持った果物ナイフを自分自身へ向けた。



「だって絶交するんでしょ? 兄ちゃんと。ユウはそう言ったよね?」


「とっ取り消すから! 取り消す! ウソ! さっきのはウソ!」



「うーん。ほんとかな?」


 ユウは何度も何度も首を縦に振った。


 必死なユウって本当に可愛いなぁ。


 あぁ可愛い。


「じゃ。仲直りしよう。いつもみたいに」



 俺はそういって、左手の小指をユウに差し出した。