ダッキングで拳を回避する度に、その風圧で夏彦の長い前髪が揺れる。

何という豪打か。

頭に貰えば一発で脳震盪を起こして失神してしまいそうだ。

「どしたよ兄ちゃん、逃げるだけか?あ゛ぁ?」

調子に乗って次々打撃を放つ学ラン。

確かに一見すると、夏彦は為す術もなく逃げ回っているように見える。

しかし、学ランもギャラリーも気付いていない。

夏彦はフットワークを使っていない。

ボクシングの命であるフットワークを使う事なく、足を止めたままで学ランの豪打を全ていなしているのだ。