「部長、願ってもないお話、感謝します。少しだけお時間をいただいてもよろしいですか?」



この場を収めるためにはこう言うしかなかった。部長はあたしの言葉にいい返事を期待していると言って部屋を出た。



小坂さんは怒りを机にぶつけている。
拳を何度も何度も打ちつけて。



「湊、あなたが心配するのもわかるわ。でも、井沢さんはこんなにたくさんの人から評価されている。上司として喜ぶべきでしょ」



俯いている彼は彼女の表情までわからない。


この人があたしを見ながら薄ら笑いを浮かべていることなんて気づきもしない。