「そろそろ入学式が始まるからな。
 みんな廊下に並べ」


入学式とか…めんど。

それでもしぶしぶ廊下に並ぶ。




ここ、桜田高校は
生徒の人数が多いことで有名。

まぁまぁ頭が良ければ
すんなり入れる高校だからだとアタシは思う。

あと、行事ごとが結構大がかりらしくて
地域の人も参加できるようになってる。

ボランティア活動もやってるって
聞いたことがあるし、周りからの信頼は高いようで。

なんてめんどくさいんだろう、
とアタシは思うけどね。


桜吹雪の中、入学式は始まる。
校庭は桜の花びらだらけ。


「――では、新1年生からお願いします」

誰だろ。頭が一番良かったって
人が呼ばれるんだったっけ…

「はい」


―――あれ?
今の声どこかで聞いた気が…


「1年B組、寺沢時雨君です」

あ、あの人だ!
『しぐれ』って名前なんだ…
なんか名前もカッコいいなぁ。


「ね、かっこよくない?」
「ヤバいよねー、あれで頭いいとか」

女子がざわざわし始める。
男子の目線が痛いよ。


「――そして、みんなが無事この、
 桜田高校に入れたことを―――」

なんでだろ、時雨君から目が離れないよ。
アタシの目はいつから磁石になっちゃったの?

なんだか、胸も痛いよ。

みんなはこんな経験したことあるのかな。
それとも、アタシだけ…?


話が終わるまで結局アタシは
時雨君のことをずっと見てた。

ちょっと自分って気持ち悪いなって思った。
でも、目が、目が、時雨君のことをおっちゃうの。


「――――では、終わります」

ステージから時雨君が下りても、
なんだかまだ夢を見てるみたいで。

学校生活が充実しそうだな、って思った瞬間。


でも、そんなに甘くなかったんだって
あとから哭くことになるなんて、
誰も、アタシも知らない。