「おはよー、どうしたの、最近朝早いね」


今日も机の上でうとうとしていると、江里乃がやってきて、先週と同じように私を見て驚いた。


「江里乃こそ、相変わらず早いねーおはよ」


江里乃はいつも一番に教室にやってくる。
というのも、私の家よりも遠くちょっと田舎になっているので電車の時間があまりないためらしい。


「さっき、瀬戸山に会ったよ」

「……え?」


思いがけない名前にびくりと肩をふるわせると、江里乃がにやにやする。
また変な誤解を生んでしまったらしい。


「もしかして早くきてるのって関係してるの? 今まで朝に瀬戸山に会ったことなんてなかったのに、ふたりして早いなんてー」

「違う、全然違うから……! 本当に! 関係ないから」


慌てて否定するけれど、すればするほど江里乃には逆効果なような気がする。
「大丈夫、秘密にするから」と見当違いなことを言われる。

本当に違うんだってー。
どうしたらこの誤解を解くことができるのだろう……。

もう一度違う、と口にしようとすると「うーっす」とクラスメイトが教室に入ってきて、タイミングを逃してしまった。


いや、でも。
なんで瀬戸山がこんな朝早くに学校に来てるわけ?

時間はまだ8時15分くらい。今まで江里乃が見たことないっていうなら、いつもはもっと遅いはず。

もしかしてだけど……返事を待っていたとか? 別に本人になら見られてもかまわないかもしれないけど……いや、やっぱり恥ずかしすぎるから無理!

危なかったー。危なかった!
余裕を持って早すぎるくらいに学校に来てよかった……。