「実は俺、写真部の部室にお前たちがいるの見たことがあるんだ。

あまりにもいい雰囲気だったから、入るのを遠慮したけど」


「そんなんじゃねえよ。

ただ、二人で一緒に話していると楽しいというか、落ち着くというか、ずっと二人で話していたいとは思うけど。

特別なんだよ、木ノ内さんとの時間は」


「そういうのを好きって言うんじゃないか」


即座にそう言われると、返す言葉が何も出てこなかった。

自分の気持ちなのに、自分が一番よく分からない、なんて苦しく切ないことだろう。


「本当にそんなんじゃないんだ。

そういう話は出てこないし、木ノ内さんもそんな感じじゃないから」


胸の奥が苦しくなっていく気がした。

今のこの気持ちがどういう答えなのか分かるのは、やはり自分だけなのだろう。


「まっ、お前の恋だから俺は何も口出しはできないけど、一つだけ。

お前がそうやって木ノ内さんのことをはっきりと好きって言わないから、木ノ内さんも好きっていう素振りを見せられず、口にすることができないんじゃないか。

そう考えてみるのも、有りってこと」


それだけ言うと、先に教室へと戻っていった。