「いや、誰がっていうことはないんだけど……。英嗣くらいのミュージシャンなら、彼女の一人や二人や五人や十人は居てもおかしくないだろうし」
「アホかっ! そないに女がおって、体が持つか、ボケッ!」

「え? そういう問題?」
「ちゃうは、どアホ! 問題がすり替わっとるやんけっ」

「ごめん、ごめん」

てか、更にすり替えたのはあなたです。

「それでも、彼女の一人や二人くらいは……」
「せやから、俺を一夫多妻制度に引っ張り込むなっ」

「じゃあ、一人?」
「一人もなに、女なんかおらんわっ」

「えっ……。まぁた、またぁ。奥さん、嘘も大概にしてくださいよぉ。お宅の英嗣さんが、お一人なわけないじゃあございませんか」

あたしは、路上に屯ってるおば様井戸端会議の図を再現するように、左手を胸元に、右手は相手をパタパタと扇いで見せる。