「なんや、怒っとるんか?」
水上さんは、顔真似をしたまま訊ねてくる。
「いや……怒ってるっていうか……」
面と向かってムカついているとは言い難い、なんて考えながら目の前の顔を見ていたら、無理矢理作った渋い顔が可笑しくて、ぷっと思わず噴出してしまった。
「汚ったないなぁ。おつゆ飛んどるがな」
あからさまに厭そうな顔をしながら、わざとらしく頬の辺りを拭う。
「ヨダレなんか、飛ばしてないよぉ」
ゴシゴシと、頬を拭っている水上さんを見ながらあたしは笑い続ける。
だって、水上さんの顔ったら。
無理に怒った顔をしているから、ちょっと見恐いんだけど、無理がたたってか、頬の辺りは引き釣り気味で、口元が斜めに歪んでいるのだ。
そのまま口先を尖らせたら、恐いひょっとこに間違われても仕方ない。