『悪い、悪い。ちょっと、仕事が立て込んでて、なかなか銀行へいけなかったんだよ』
「あっそっ。で、電話してきたって事は、暇ができたんでしょ。早いところ、代金振り込んでよね」

冷静にあしらうと、小さな溜息が聞こえてくる。

『なんだか、取り立て屋みたいだな』

唯一の兄妹に冷たくあしらわれて、兄ちゃんは悲しいよ、と電話越しでも分かるほどのわざとらしい演技に対し、更に、はいはい、と冷たく返事をする。

大体、実際に取り立てられてんのは、あたしだっつーのっ。

『ところで、提案なんだけど』
「なに……?」

気を取り直し、提案なんて持ちかけてくる凌が、何を考えているのかと早々に勘ぐる。

だって、こいつがあたしの得になるような事を持ちかけてくるとは、到底思えないから。