「もしもし」
『あ、俺』
「俺って、誰よ」

判っていながら、わざと問う。
待たせた仕返しだ。

『俺だよ』

相手は、然も分かってんだろ、と言わんばかりに名乗らない。
仕方がないので、調子に乗った会話を続けることにした。

「俺俺詐欺なら、間にあってまーす。てか、詐欺に支払えるほどお金持ってませーん。ていうか、マイナスぅ。なんなら、あたしが詐欺をする立場でもおかしくないでーす」

ふざけた事を言っていると、凌のケタケタと笑う声が聞こえてきた。
その声を遮り、調子を戻す。

「ていうかさー。連絡してくるの、おっそいけど。依頼料は、どうなってるわけ?」

ふんっ、と鼻息を立てる。