なのに、どうしてあんな風になってしまったんだろう……。

トンボや蝉を捕まえてきては、あたしのTシャツの中に入れてきたり。
ネクタイを結ぶ練習といって、あたしの首を練習台にし、ありえない力でギュッと締め付けたり。

つーか、これには、殺意さえ感じた。

その上、学校の宿題で出された家族の事を書く感想文が、兄によって摩り替えられていたんだ。

当初の内容は、大好きだった母の事を書いていたのに、その痕跡は微塵もなく。
鞄に入っていた感想文は、兄がどれほど優秀で、優しいかをコンコンと書き上げたものだった。

授業中先生にさされ、読み上げる段階になって初めて気付いたあたしが、その感想文を読めずに口ごもっていると、早く読みなさいと催促され。
ありもしない兄の偉業めいた事を、どれほどの不満を抱えながら読み上げた事か。

その作文のおかげで、普段でもかっこいいとか、頭がいいとか持て囃されていた兄の株は、更に急上昇したのだ。

なんとも、納得し難いことだった。
ああ、無情。