「大丈夫ですよ。特に、変わりないですけど……」
そこまで言ってから、凌の存在を思い出す。
また、“便利屋”の仕事。
しかも、前回と同じ擬似恋人の仕事依頼を受けたなんて言ったら、あのときのように不機嫌になる気がして、心臓がキュッと一回り縮む。
『けど、なんや?』
訝る声で訊き返してくる水上さんへ、慌てて取り繕う。
「いえいえ。それより、大阪は、どうですか?」
留守の間に何をしているのか訊かれちゃ困る、と話の矛先を変えてみた。
『ん? まぁ、いつもとかわらん。ただ、東京よりは、やっぱり大阪や、と思うな』
ですよねぇ。
大阪出身ですもんね。
地元が一番ですよね。
家族や友達の居るそっちの空気は、さぞ美味しい事でしょう。
うんうん、なんて見えない相手に頷いてみる。