「あと、いくらだ?」
「え?」
「借金だよ。あと、いくら」

凌の真剣でいて、責めるような口調にあたしはオドオドしながら残りの額を告げた。

「結構あるなぁ……」

呟くと、考え込むようにして黙り込んでしまった。

そのうちに、車は渋谷の混み合った場所へと着いた。

中心地からは若干離れた場所のパーキングに空きを見つけ、そこに車を駐める。
車から降り立つと、表参道とは違った街のゴミゴミしさと、たくさんの人息に酔いそうになった。

「大丈夫か?」

顔を顰め、俯くあたしを覗き込む。

こんな風に気遣いのできる男だっただろうか?

風邪をひいているあたしを水風呂に入れたり、寒風摩擦だと冬の寒空に放り出していたのが嘘のような気の遣いよう。

まぁ、人間年を重ねれば、少しは成長するっていう事か。

「平気」

あたしは、ふぅっ、と息を一つ吐き出し歩き出す。