表に出ると、タクシーがドアを開けてあたしたちを待っていた。

「水上さん、乗って下さい」
「ちゃうっ!」

あたしが車内へ促すと、いきなり叫びだした。

違う?

「何がですか?」

このタクシーが気に食わないのか?
緑のラインはイヤだってか?
黄色のがいいのか?
それとも白?

はたまた、運転手が気に食わないとか?

そうよね、ちょっと見ズラっぽいし、オヤジ特有の肌はクレーターでデコボコだし、って、コラッ。

そんなのり突っ込みは、どうでもいいのだ。

とにかく、我儘なんて言ってもらっちゃ困ります。
いくら車内が加齢臭で満ちていようとも、運ちゃんの態度が悪かろうとも、乗ってもらわねば困るんです。