呆れるあたしに気付きもせず、水上さんは店員さんをテーブルに呼んで、しっかりカードでお支払を済ませてくれる。

ありがたや、ありがたや。
ご馳走さんでございます。

日本昔話に出てくる、おじいやおばあさん並に両手を擦り合わせてお礼のポーズ。

そのあと、あたしはお店の人に頼んでタクシーを回してもらった。

「水上さん、立てますか?」

あたしが手を差し伸べると、どあほぉっ! とその手を払われる。

「酔ってへんわ」

言葉とは裏腹にフラフラと立ち上がると、あたしへ買ってくれたコートの袋をしっかりと抱え出口を目指す。

「ああっ。それ、自分で持ちますから」

慌てて手を伸ばすと、またパシッと払われる。

「女は、そないなことせんでええのんやっ」

どうやら、レディー扱いされているみたい。

ありがたいけど、酔っているのでありがたくないような微妙なところ……。