「あのぉ、ごめんなさい……」
「ん? なにがや?」
「コート選びに、時間かかりすぎたよね」

あたしは、水上さんの顔色を窺うようにして見た。

「気にせんでええし」

水上さんは、さほどのことでもないというように、プイッと窓の外を向いてしまった。
それは、気を遣うあたしに対して怒ったようにも見えたけれど、多分そんな事はないだろうな、と今日一日の行動を振り返ってみて思った。

だって、手を差し伸べてくれたり、わざわざコートを買いに連れて行ってくれたり、そんなぎこちなくも優しい感情を持っている人だから、これは照れ隠しなんだろうなと思えたんだ。