「紗希!私も手伝うよ」
 千春が走って来てくれた。
 
 「千春…。」

 「余計な事すんなよ、戸田」
 2年生が口を挟む。
 「そうそう、園上さんもいいって言ってくれたし」
 「関係ない人は早く帰りましょう♪」
 
 そう言ってみんな帰ってしまい、残ったのは
 私と無数に散らばったボールだけになった。

 「…はやく終わらせて帰ろう」
 溢れ出しそうな涙を食いしばり片付けを始めた。

 ガタンッ
 入口の方で何かの音がした。

 私は怖くなって片付けのスピードをあげた。
 ボールに手を伸ばした瞬間、頭に何かが当たり
 その衝撃で勢いよく倒れた。

 「痛ったーい、何なの」 
 あまりの痛さに半泣きの状態。

 「あ!悪い!」
 ボールの飛んで来た方を見るとそこには
 あの鈴木空がいた。

 「ええええ、エースがなんで!」
 私は頭を抑えて起き上がった。

 「何だよ、エースって(笑)」

 鈴木空はそう言いながら駆け寄ってきた。

 「ん。手」
 「ほえ!?」
 な、何声裏がえってんの!
 「いや、手」
 差し出された手が私の腕をグイっと
 引っ張った。
 「あ、ありがとう」
 予想外の行動に私は混乱気味。

 「てゆうか、ごめんな。怪我しなかった?」
 「全然、大丈夫です。」
 「それならよかったけど、こんな時間に1人で何してんの?」
 「いや、あの片付け頼まれちゃってて」
 「はあ?この量を?馬鹿じゃねーの?」
 
 私あの鈴木空と普通に会話してる。
 すご!夢みたい。
 そんな事を1人で感動していると、
 
 「なんで嫌だってゆわなかったんだよ」
 鈴木空が重い質問をしてきた。
 「それは…」
 私は黙り込むだけで何も言えなくなった。

 「やっぱり何も言わなくていい」
 「え?」
 「お前の顔が言いたくないって言ってる」
 「でも我慢はすんなよ?溜め込むだけは辛れーぞ(笑)」
 そう言ってニカっと笑ってくれた。