まるで水色の絵の具で空を塗ったくったのかと疑うほど、
清々しく晴れた朝。


いつもより、少しだけ早く目が覚めて

いつもより、少しだけ世界が輝いて見えた。





昨日となんら変わらない、平凡な朝食も

毎朝同じ笑顔で語りかけてくるアナウンサーも



ほんのちょっとだけ
昨日とは違って見えた。





朝の時間に余裕があるだけで

今ならなんだって出来るような気さえした。












いつもより念入りにゆったりと支度をして、玄関へ向かう。



今目の前にあるこの扉を開いたら、どんな素敵な1日が待っているのだろう。






そんなワクワクとした気持ちを抑えつつ





素敵な今日への扉を開いた――――




















そして

















――――――――――閉めた。











どうして……



「おーい。」



扉の向こう―玄関の外―から聞こえる間延びした声。



「出ておいでー」




どうしているんだ…






恐る恐る扉をもう一度開き、そっと外を伺った。








「なんなの、その態度。」







どうしてこいつがいるんだあああぁぁ!!







せっかく気持ちの良い朝、
メルヘンチックな気分だったのに……。



どうしてこうなるんだ!!



なんだかいいことがありそうだ、と胸躍らせていたというのに!!






今日という日に期待して
念入りに髪の毛とお肌を手入れした時間がイッキに無駄に感じられる……。






全部目の前にいるこいつのせいだ!





思わず相手をキッと睨んだ。






いつまでも玄関扉の狭い隙間から相手を睨んでいると、




大きくため息をつき、やれやれといった顔で




「何してんの。おいで。」



と言ってきた。





そっちこそなんでいるんだよ。


と思いつつ、

体は素直に言うことを聞いて、外へ踏み出しているから不思議だ。






それがちょっと悔しくて、苦しまぎれに




「別になにもしてないけど……。」



とふてぶてしく答えてしまった。






まぁ、なにもしてないことなんて
向こうだって百も承知だろうが。






「そんなの知ってる。」







ほら、やっぱり。



バカにしたように笑ってるし。

悔しい……!







いつだってこうだ。


いつだってこいつは私の上を涼しげに飛び越える。





「ほら、早く行くよ。はる」




「言われなくても行きますっ!」





ほんとに可愛げのない女だとつくづく思う。




朝から会えたこと、
“はる”と呼んでくれたこと、
本当はすんごく嬉しいんだって伝えたいんだけど、




素直になるのって難しいんだもん。







「やっと付いてきた。」


そう言って薄く笑う伊崎。







伊崎もこんな意地っ張り呆れてるよね……。