「どうかしましたか?!」


制服の男が、声をかけてきた。

陽子は、それが警察官だと知ると、再びその場に座り込んだ。

「す、すいません。あの、知らない人に、付けられてて・・・」

最後は、声にならなかった。

警察官は、側に近付いて来て、陽子の格好を見るなり「ど、襲われたんですか!?」驚いた声を上げた。

陽子は、パンプスも脱げ、ところどころストッキングは擦り切れ、白いジャケットも黒ずみ、右足は全体的に血が滲んでいた。

「いや、違うんです。これは、勝手に自分でこけちゃって」

「救急車を手配しましょうか?」

「え!いいです!大丈夫です!家ももうそこですし」
さすがに、救急車となると大袈裟に感じたのか、陽子は断る。

「し、しかし・・・」

警察官は、何か言いたそうだった。

「では、せめて、家までお送りします。よろしいですか」

先ほどの恐怖がまだ身体中に残っていたのと、右足の痛みのため、お願いすることにした。