「お父さんだって、なんていうか……」

 
目じりに皺を寄せて、いつも疲れた顔で笑う父親が思い出される。

俺の母親と結婚して、家族になった人。

俺と一歌との間に、『姉と弟』という枠組みを作り上げた張本人。

母さんが死んだ後も、血の繋がりがない俺を放り出すことなく育ててくれてる。
 
経済面でも感謝しきれないくらい感謝していた。


けど……。


「……黙ってればいいよ」


俺と一歌とのことを話したとき、あの笑顔が凍りつくのかと思うと、少しだけ怖い。

でも、それでも、

一歌を諦めるという選択肢はない。


だって俺たちは――


「一歌こそよく考えてみろよ。俺たち結婚だってできるんだ。調べたんだよ。籍を抜けば姉弟じゃなくなるし、血の繋がりもないから、何の問題もないよ」

「……」