他人の『運命』のにおいに、 一歌を近づけさせてはいけない。 「リハビリって痛くなかった?」 風に抗うようにして、高い声が耳に届く。 病院からの帰り、自転車の後ろに一歌を乗せて、坂を下った。 「別に痛みはなかった。指だけ風呂に入った感じ」 「風呂?」 緑に光る怪しげな装置と、大きく笑う理学療法士の顔が甦る。 悪い虫、だ。