「理学療法士の久保です。よろしく」


握手でも求めてきそうなその男は、目を糸みたいに細めながら俺の指に包帯を巻いた。


リハビリは緑色に光る怪しげな湯に数分間、中指を浸けるだけ。

その間、この男はひたすら喋り続けていた。


骨折は初めてか、というところから始まって、学校はどうだとか、友達はどうだとか。

俺が相槌を打たなくても気にせずに、ほとんど1人で話していた。


めんどくせーと思って聞き流していたとき、不意に「お姉さんは」という単語が耳に飛び込んできた。


「お姉さんは、目の前の通りが通学路なのかな?」

「……」


なんだこいつ。


顔をしかめると、久保は白い歯を覗かせて弁解するように笑った。