「思い過ごしなんじゃないかな。ほら、あたしってきっと、瑞貴にとって一番身近な女だから――」
そう、思い過ごしだったらどんなによかったか。
「そうじゃないことくらい、自分で分かってる」
泣きそうな顔で別れを告げてきた北原の顔が思い浮かんだ。
あの別れがあったから、今の俺がいる。
北原は、短い期間とはいえ、一歌よりもずっと身近な距離にいた。
それでもダメだったんだ。
むしろ、一歌の存在を余計に意識するだけだった。
北原を傷つけて、ようやく自分がどこを向いているのか気づいた。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…