夜、一歌が部屋に入ったのを確認して、ドアをノックした。
風呂上りらしい、濡れた髪と、上気した頬に、心臓を鷲掴みにされる。
身体を駆け上がる衝動を咄嗟に堪えた。
心臓が落ち着くまでじっとしている間、一歌は深刻そうな表情で佇んでいた。
「俺、本気だから」
ゆっくり告げると一歌の表情がかすかにこわばった。
「な、なにが?」
ドライヤーを手にしたままラグに座っている彼女。俺が足を一歩踏み出すと、距離を保つように退く。
「だから……好きだって話」
「ちょ、ちょっと待って」
あわてた様子の一歌に近づいて、俺は目線を合わせるようにしゃがんだ。